弁護士 木村康之のブログ

世田谷区・経堂の弁護士です。身近な法律問題についての情報を発信していきます。

2013-01-01から1年間の記事一覧

人工妊娠中絶による損害賠償額(人工妊娠中絶による慰謝料請求の可否・その2)

裁判例で認められた損害賠償額 東京地判平成21年5月27日 東京地判平成24年5月16日 裁判例で認められた損害賠償額 以前の記事で,中絶をした女性から男性に対する損害賠償請求を認めた裁判例2つをご紹介しましたが,これらの裁判例で具体的にいく…

弁護士の平均年収2,000万円のカラクリ

弁護士は高収入? 「伊藤塾」のホームページに掲載されているコラム 弁護士の平均「収入」は2,167万円 弁護士の平均「所得」は1,107万円 国税庁の統計では… 弁護士は高収入? 「若手弁護士の窮状」という記事で,東京の若手弁護士の現状についてご紹介しまし…

登録3年目までの弁護士が置かれる状況(若手弁護士の窮状・その3)

登録1~3年目の弁護士についての補足 登録1~3年目の弁護士の場合 登録1年目 登録2~3年目 弁護士会費の負担は… 独立するにあたっての収支バランスの目安 登録1~3年目の弁護士についての補足 というわけで,登録4年目の弁護士の目線から,主に若…

若手弁護士にまつわる話題のアレコレ(若手弁護士の窮状・その2)

「アパ弁」,「ケータイ弁」? 年間所得70万円以下? 国選弁護も取り合い? 広告による集客は可能? 弁護士会の法律相談の状況は? 『年収70万円以下? 客の金に手を出す貧乏弁護士の懐事情』(PRESIDENT 2012年12月3日号) こちらの記事の中で,弁護士の…

東京の若手弁護士の現状(若手弁護士の窮状・その1)

若手弁護士の窮乏ぶりが話題に 東京の若手弁護士の現状は… 月々の支出について 収入について 収支のバランスを取るための工夫 若手弁護士の窮乏ぶりが話題に ここ数年,弁護士数の急増に伴い,若手弁護士を中心に,その窮乏ぶりが話題にのぼるようになってき…

婚約の認定(婚約破棄と慰謝料請求・その1)

婚約の不当破棄による損害賠償請求 損害賠償請求のためには,婚約の成立を証明する必要がある 婚約の成立をどう立証するか 大判昭和6年2月20日 東京地判平成24年1月27日 外形的な事実から,婚約の成立を推測していく 結納や婚約指輪は,婚約の成立…

不法行為による損害賠償請求と人工妊娠中絶(人工妊娠中絶による慰謝料請求の可否・その1)

不法行為による損害賠償請求と人工妊娠中絶 不法故意による損害賠償請求 人工妊娠中絶についての従来の考え方 損害賠償請求を認める裁判例の出現 東京高判平成21年10月15日 東京地判平成24年5月16日 不法行為による損害賠償請求と人工妊娠中絶 不…

質屋営業法第36条の利率の悪用(ヤミ金による偽装質屋の問題・その2)

質屋営業法第36条の制定経緯 出資法の制限利率の引き下げ 質屋については,出資法の制限利率の引き下げから除外された 質屋営業法第36条の利率が悪用されるのではないかという危惧 質屋営業法第36条の制定経緯 出資法も質屋営業法36条も,昭和29年…

偽装質屋問題の背景にあるもの(ヤミ金による偽装質屋の問題・その1)

質屋を装うヤミ金 問題の背景にあるのは 質屋営業法第36条による出資法第5条2項の読み替え 質屋営業法第36条が存在する理由は… 質屋を装うヤミ金 『質店装うヤミ金、摘発強化=年金口座から取り立ても-警察庁』 (時事ドットコム) ヤミ金が,質店を…

訴状の受け取りを拒否した場合(訴状を無視した場合の結末・その3)

訴状の受け取りを拒否すると… 「書留郵便に付する送達」(付郵便送達) 擬制自白による敗訴判決 訴状が届いたら… 訴状の受け取りを拒否すると… 次に,被告が不在を装って訴状を受け取らなかった場合はどうでしょうか。 「書留郵便に付する送達」(付郵便送達…

受け取った訴状を放置した場合(訴状を無視した場合の結末・その2)

受け取った訴状を放置すると… 審理・判決は可能 擬制自白による敗訴判決 受け取った訴状を放置すると… まず,被告が訴状を受け取りながらこれを放置した場合はどうでしょうか。 審理・判決は可能 被告が訴状の送達を受けているということは,裁判所が審理を…

民事裁判と訴状の「送達」(訴状を無視した場合の結末・その1)

訴状の提出による民事裁判の提起 審理・判決のためには訴状の「送達」が必要 郵便による送達 訴状の放置,受け取り拒否 訴状を無視した場合の結末は… 訴状の提出による民事裁判の提起 民事裁判は,原告が,裁判所に「訴状」を提出することによって提起されま…

弁護士木村康之へのお問い合わせ・ご相談について

お電話によるお問い合わせ・ご相談のお申込み メールによるお問い合わせ・ご相談のお申込み 法律相談料 平日日中(午前9時30分~午後5時30分)の法律相談 平日夜間(午後6時~午後9時)・土曜(午後1時~午後4時)の法律相談 主な取扱事件 特殊な…

処分の軽減についての裁判例(運転免許取消・免許停止処分の軽減・その5)

「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」の認定 「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」の認定に関する裁判例 「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」は厳格に認定される 「運転者としての危険性が…

免許停止処分の30日軽減と60日軽減(運転免許取消・免許停止処分の軽減・その4)

30日の軽減か,60日の軽減か 「運転免許の効力の停止等の処分量定の特例及び軽減の基準について」 「運転免許の効力の停止等の処分量定の特例及び軽減の基準について」によると… 30日の軽減か,60日の軽減か もっとも,「処分量定基準」からは,どの…

免許停止処分の軽減(運転免許取消・免許停止処分の軽減・その3)

免許停止処分の軽減 「運転免許の効力の停止等の処分量定基準」(=処分量定基準) 「処分量定基準」によると… 免許停止処分の軽減 次に,免許停止処分の軽減についてです。 「運転免許の効力の停止等の処分量定基準」(=処分量定基準) 免許取消処分の軽減…

免許取消処分の軽減(運転免許取消・免許停止処分の軽減・その2)

免許取消処分の軽減 「運転免許の効力の停止等の処分量定基準」(=処分量定基準) 「処分量定基準」によると… 免許取消処分の軽減 まず,免許取消処分の軽減についてです。 「運転免許の効力の停止等の処分量定基準」(=処分量定基準) 「運転免許の効力の…

運転免許取消・免許停止処分の軽減と警察庁通達(運転免許取消・免許停止処分の軽減・その1)

運転免許取消・免許停止処分の軽減(短縮)は可能? 警察庁の通達の存在 運転免許取消・免許停止処分の軽減(短縮)は可能? 運転免許について,違反行為や事故による点数が累積していくと,累積点数に応じて免許取消処分(欠格期間1~5年もしくは3~10…

事業主に対する損害賠償請求を認めた裁判例(厚生年金未加入に対する対応策・その5)

事業主に損害賠償請求をするためには… 事業主の届出義務は「私法上の義務」か? 事業主に対する損害賠償請求を認めた裁判例 事業主に損害賠償請求をするためには… 厚生年金への未加入を理由に、被保険者が事業主に対して損害賠償を請求する場合、債務不履行…

事業主に対する損害賠償請求(厚生年金未加入に対する対応策・その4)

確認請求をすれば不利益は避けられるが… 事業主に対する損害賠償請求 確認請求をすれば不利益は避けられるが… 前回の記事の通り,保険料徴収権の時効消滅前に確認請求をすることができれば,保険料徴収権が時効消滅してしまうことに伴う不利益を回避すること…

被保険者による確認請求(厚生年金未加入に対する対応策・その3)

事業主による届出の懈怠 届出がなされなかった場合の不利益 被保険者による確認請求 届出がなされなかったことによる不利益を回避できる 事業主による届出の懈怠 このように,本来であれば,事業主による届出(厚年27条)→厚生労働大臣による確認(厚年1…

厚生年金への加入手続(厚生年金未加入に対する対応策・その2)

厚生年金への加入手続 厚生労働大臣の確認 事業主による届出 厚生年金への加入手続 そもそも,厚生年金への加入手続はどのように行われるのでしょうか。 厚生労働大臣の確認 厚生年金の被保険者資格については,厚生年金保険法9条が「適用事業所に使用され…

厚生年金未加入が生じる仕組み(厚生年金未加入に対する対応策・その1)

事業主が厚生年金への加入手続をしないことがある 厚生年金未加入が生じる仕組みと対応策は… 事業主が厚生年金への加入手続をしないことがある サラリーマンやOLなど,民間企業にお勤めの方の場合,会社によって厚生年金の加入手続が行われ,保険料が源泉徴…

年金支分権の効力発生について裁定が果たす機能(年金支分権の消滅時効の起算点・その5)

東京高裁判決vs名古屋高裁判決 支分権の効力発生について,裁定が果たす機能 私見 東京高裁判決vs名古屋高裁判決 前回までの記事でご紹介したとおり,東京高裁と名古屋高裁の判断は分かれていますが,どちらの判断が正当といえるでしょうか。 支分権の効力発…

年金受給権の裁定までは消滅時効の期間は進行しないとする裁判例(年金支分権の消滅時効の起算点・その4)

名古屋高判平成24年4月20日の判示 名古屋高裁判決によれば… 名古屋高判平成24年4月20日の判示 前回の記事でご紹介した東京高判平成23年4月20日に対し、名古屋高判平成24年4月20日は以下のとおり判示しています。 『…国民年金法16条は…

伝聞法則を理解するためのポイント~実践編~

「主要事実」は何か 公訴事実の確認 被告人の認否 争いのある「主要事実」は… 検察官の立証趣旨 「要証事実」は何か 「直接証拠型」か,「間接事実型」か 「主張事実①」に関係する間接事実 甲供述の要証事実は… W供述の要証事実は… 「主要事実②」に関係する…

年金受給権の裁定前から消滅時効期間の進行を認める裁判例(年金支分権の消滅時効の起算点・その3)

東京高判平成23年4月20日の判示 東京高裁判決によれば… 東京高判平成23年4月20日の判示 前回までの記事で述べた問題点について,東京地判平成22年11月12日は以下のように判示し,東京高判平成23年4月20日もこれを踏襲しました。 『…年…

年金受給権の裁定と「権利を行使することができる時」の関係(年金支分権の消滅時効の起算点・その2)

年金の支給を受けるために必要な手続 国民年金法16条と最高裁判決 年金の支給を受けるためには裁定が必要 問題の所在 年金の支給を受けるために必要な手続 ところで,②年金の支分権は,支払期月が到来すれば当然に支払いが受けられる,というわけではあり…

年金支分権の「権利を行使することができる時」(年金支分権の消滅時効の起算点・その1)

年金の支給を受ける権利の消滅時効 平成19年7月6日の法改正より前の取扱い 年金の支分権の消滅時効 会計法及び民法の適用 「権利を行使することができる時」はいつか 年金の支給を受ける権利の消滅時効 年金の支給を受ける権利も,他の債権と同じように…

利息制限法第1条2項についての最高裁判決と,質屋に対する過払金返還請求の関係(質屋と利息制限法・その5)

質屋に対する利息制限法の適用と,同法第1条2項の関係 利息制限法第1条2項についての最高裁判例の出現 昭和39年11月18日最高裁大法廷判決 昭和43年11月13日最高裁大法廷判決 最高裁判決の射程は質屋にも及ぶ 質屋に対して過払金返還請求をす…