名古屋高判平成24年4月20日の判示
前回の記事でご紹介した東京高判平成23年4月20日に対し、名古屋高判平成24年4月20日は以下のとおり判示しています。
『…国民年金法16条は,年金給付を受ける権利(基本権)について,受給権者の請求に基づき社会保険庁長官が裁定するものと規定しているところ,これは,画一公平な処理により無用の紛争を防止し,給付の法的確実性を担保するため,その権利の発生要件の存否や金額等につき,公権的に確認するのが相当であるとの見地から,基本権たる受給権について,社会保険庁長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものであるから(最高裁平成3年(行ツ)第212号同7年11月7日第三小法廷判決・民集49巻9号2829頁参照),社会保険庁長官による裁定がされる前は,支分権についても,現実に給付を受けることはできないことは明らかである。
そうすると,国民年金法が,受給権の発生要件や年金給付の支給時期,金額について定めており(同法18条,30条,33条等参照),社会保険庁長官の裁定は,上記のとおり,確認行為にすぎないことを考慮しても,受給権者は,基本権について,社会保険庁長官に対して裁定請求をし,社会保険庁長官の裁定を受けない限り,支分権を行使することができないのであって,社会保険庁長官の裁定を受けるまでは,支分権は,未だ具体化していないものというほかはない。
したがって,社会保険庁長官の裁定を受けていないことは,支分権の消滅時効との関係で,法律上の障碍に当たり,時効の進行の妨げになるというべきである(このように解しても,時効の中断,停止などの事情がない限り,国民年金法102条により,権利発生の日から5年が経過すれば,基本権について消滅時効が完成するのであるから,特段の問題が生じることはないものと考えられる。…。)。』
名古屋高裁判決によれば…
この名古屋高裁判決は、たとえ受給権者が裁定請求をしても、社会保険庁長官による裁定がなされなければ受給権者が年金を受給することができないことから、未裁定であることは法律上の障害にあたり、裁定を受けるまでは消滅時効は進行しないと結論づけています。
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