弁護士 木村康之のブログ

世田谷区・経堂の弁護士です。身近な法律問題についての情報を発信していきます。

質屋営業法第36条の利率の悪用(ヤミ金による偽装質屋の問題・その2)

質屋営業法第36条の制定経緯

出資法も質屋営業法36条も,昭和29年に制定された法律ですが,当時の制限利率については,出資法も質屋営業法も日歩30銭(年に換算すると109.5%)と差異はありませんでした。
以前の記事でご紹介したとおり,質屋営業法の趣旨は,出資法の規定を,月暦計算を認める形に読み替えて適用することにありました。)

出資法の制限利率の引き下げ

その後,時代が進むにつれて,サラ金業者による厳しい取り立て等が社会問題化したため,昭和58年,サラ金業者への法規制が設けられると共に,出資法の制限利率が引き下げられる(年109.5%→73%)ことになりました。

質屋については,出資法の制限利率の引き下げから除外された

ところが,質屋については,質物を担保に取っており,厳しい取り立て行為等は行っておらず,社会問題にもなっていなかったことから,この制限利率の引き下げの対象からは除外され,年109.5%の利率のまま据え置かれることになったのです。
その後,出資法の利率は段階的に引き下げられていき,現在の利率(年20%)に至るわけですが,質屋については特に引き下げが行われないまま,現在に至っています。

質屋営業法第36条の利率が悪用されるのではないかという危惧

なお,出資法の利率が現在の利率(年20%)に引き下げられたのは平成18年の法改正によるものですが,当時の国会では,以下のようなやりとりがされていました。

『○政府参考人竹花豊君)
お答え申し上げます。
出資法の上限金利は、昭和二十九年の制定当時、金銭の貸付けを行う者すべてについて一〇九・五%とされていたところ、その後いわゆるサラ金問題等への対応として出資法の上限金利が引き下げられてきた経緯があるわけでございますけれども、質屋につきましては、元々質物を担保に取っているため債務者に対する取立てを行う必要がなく、過酷な取立て等の社会問題が生じていないこと、また、一件当たりの平均貸付額が少額であるため多重債務が問題とならないことなど、その営業実態がいわゆる消費者金融業者と異なることにかんがみまして、これまで見直しの対象とされず、従来どおりの金利の特例が残されたものであると承知をいたしております。

尾立源幸
それでは、お手元の資料の三ページをごらんください。今御説明ございましたように、当初は一〇九・五%というのが出資法もそうだったんですね。貸金業規制がありまして七三とかに下がっていくわけですが、なぜか質屋営業法の部分だけは手付かずのままここまで来てしまっております。私、今御説明聞いておりまして、質屋さんがそんな問題を起こしているとは思わないんですけれども、余りにもこのギャップがあり過ぎて、これが将来私、悪用されかねないんじゃないかと、このように思っておるわけでございます。』

実は,平成18年当時から,質屋営業法第36条の利率が悪用されるのではないかという危惧は存在していたんですね。

その危惧がまさに現実のものとなっているわけですが,これからどのような対応がなされていくのか,注目していきたいと思います。

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