弁護士 木村康之のブログ

世田谷区・経堂の弁護士です。身近な法律問題についての情報を発信していきます。

年金受給権の裁定と「権利を行使することができる時」の関係(年金支分権の消滅時効の起算点・その2)

年金の支給を受けるために必要な手続

ところで,②年金の支分権は,支払期月が到来すれば当然に支払いが受けられる,というわけではありません。

国民年金法16条と最高裁判決

国民年金法16条(厚生年金保険法33条)は,

「(保険)給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基いて、厚生労働大臣が裁定する。」

と定めていますが,最高裁は,この規定について以下のとおり判示しています。

『(国民年金法16条)は、給付を受ける権利は、受給権者の請求に基づき社会保険庁長官が裁定するものとしているが、これは、画一公平な処理により無用の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するため、その権利の発生要件の存否や金額等につき同長官が公権的に確認するのが相当であるとの見地から、基本権たる受給権について、同長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものである。』(平成7年11月7日最高裁判所第三小法廷判決)

年金の支給を受けるためには裁定が必要 

この国民年金法16条の規定と,同条について最高裁が判示したところによると,年金受給権者は,基本権たる年金受給権について厚生労働大臣最高裁判例の当時は社会保険庁長官)の裁定を受けない限り,支分権たる年金受給権を行使できないということなります。

問題の所在

そのため,裁定を受けていないにもかかわらず支払期月が到来してしまった②年金の支分権について,消滅時効の起算点をどのように考えるか(支払期月が到来している以上,支払期月の到来時から消滅時効が進行すると考えるか,それとも,裁定を受けていない以上,消滅時効は進行しないと考えるか)見解が分かれているのです。
(これとは異なり,裁定を受け,かつ,支払期月が到来している②年金の支分権については,支払期月の到来時が消滅時効の起算点になると考えられています)

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