年金の支給を受ける権利の消滅時効
年金の支給を受ける権利も,他の債権と同じように時効により消滅します。
具体的には,
①年金の基本権(年金給付を受ける権利)
②年金の支分権(①の基本権に基づき,支払期月ごとに年金給付を受ける権利)
とも,支給事由の生じた日から5年を経過したときは,時効によって消滅します(国民年金法102条1項,厚生年金保険法92条1項)。
もっとも,5年を経過したら自動的に時効消滅するわけではなく,国による時効の援用が必要であるとされています(国民年金法102条3項,厚生年金保険法92条4項)。
平成19年7月6日の法改正より前の取扱い
年金の支分権の消滅時効
ところで,上記の取扱いは平成19年7月6日に法律が改正されたことによるもので,それ以前は,②年金の支分権については,国民年金法も厚生年金保険法も規定を置いていませんでした。
会計法及び民法の適用
そのため,②年金の支分権については,「国に対する権利で,金銭の給付を目的とするもの」として会計法及び民法の適用を受けるとされていました。
具体的には,
- 消滅時効期間は5年間(会計法30条)
- 消滅時効の起算点は「権利を行使することができる時」(会計法31条2項,民法166条1項)
- 時効の援用は不要であり,時効の利益を放棄することもできない(会計法31条)
とされていたのです。
「権利を行使することができる時」はいつか
時効の援用が不要であるということは,「権利を行使することができる時」から5年を経過すると,自動的に権利が消滅していくということです。
もっとも,時効期間は「権利を行使することができる時」から5年ですから,権利を行使することができないのであれば,時効期間は進行せず,消滅時効は完成しません。
そのため,②年金の支分権について「権利を行使できることができる時」はいつなのかが重要な問題になりますが,現在,この問題について東京高裁と名古屋高裁で判断が分かれています。
次の記事から,この問題について詳しく検討してみたいと思います。
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