事業主による届出の懈怠
このように,本来であれば,事業主による届出(厚年27条)→厚生労働大臣による確認(厚年18条)という手続が踏まれるはずなのですが,前々回の記事のとおり,保険料負担を嫌う事業主が,あえてこの手続を行わないという事態が生じ得ます。
届出がなされなかった場合の不利益
厚生年金の保険料徴収権は2年で時効消滅すると定められており(厚年92条1項),保険料徴収権が時効消滅した後は,保険料を納付することができません。
そして,保険料徴収権が時効消滅してしまうと,時効消滅した保険料に係る被保険者期間に基づく保険給付が行われない(厚年75条本文)という不利益が生じることになります。
被保険者による確認請求
このような不利益を避けるための1つの方法として,被保険者自身による確認請求(厚年31条1項)があります。
厚生年金保険法31条1項は,「被保険者又は被保険者であった者は,いつでも,第18条1項の規定による確認の請求をすることができる。」と定めており,同法18条2項も「前項の(厚生労働大臣による)確認は,第27条の規定による届出もしくは第31条第1項の規定による請求により,又は職権で行うものとする。」としています。
届出がなされなかったことによる不利益を回避できる
この確認請求をしておけば,その後保険料の納付がなされず,保険料徴収権が時効消滅したとしても,その保険料に係る被保険者期間に基づく保険給付は行われますので(厚年75条但書),事業主が届出をしないことによる不利益を避けることができるのです。
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