若手弁護士の窮乏ぶりが話題に
ここ数年,弁護士数の急増に伴い,若手弁護士を中心に,その窮乏ぶりが話題にのぼるようになってきました。
「ノキ弁」,「アパート弁」,「ケータイ弁」といった呼称が使われるようになったり,年間所得が70万円以下の弁護士が多数存在することが明らかになったりと,弁護士の窮乏ぶりを示す様々な情報に接します。
東京の若手弁護士の現状は…
私自身も,登録4年目ということで,いわゆる「若手弁護士」に属するわけですが,その若手弁護士からみた「東京の若手弁護士の現状」について,少し書いてみたいと思います。
(なお,以下の記載は,私個人の情報ではなく,東京弁護士会における4年目の若手弁護士を想定しています。)
月々の支出について
東京弁護士会の場合,登録4年目になると,弁護士会費として月4万200円を納付することになります。
その他に,国民年金保険料月1万4930円,国民健康保険料月1万6000円がかかります。
あとは,事務所経費と生活費ですが,それぞれ約20万円ずつと仮定すると,合計で約47万1130円が月々の支出になります。
その他に,住民税や奨学金がこれに上乗せされていくというイメージでしょうか。
全部ひっくるめると,大体,月約50万円前後になるのではないかと思います。
収入について
事件を受任するルートが確立されていない若手の場合,弁護士会の法律相談や当番弁護,国選弁護に頼る割合が比較的多くなると思います。
では,弁護士会の法律相談や国選弁護がどのくらいの頻度で回ってくるかというと,弁護士会から割り振られるのは,大体月1件いかないくらい(それぞれについて,2ヶ月に1件くらい)でしょうか。
ちなみに,法律相談は予約が入らずキャンセルになることもあり(というか,最近はキャンセルの方が多いかも知れません),当番弁護も必ず配点があるとは限りません。また,国選弁護も,事件数以上の弁護士が集結しての取り合い(くじ引き)です。
ですので,弁護士会からの割り当てだけではとても支出(月50万円)を賄うだけの収入は得られません。
そのため,法律相談や国選弁護の交代者募集(割り当てられた担当日では都合が悪いため,他の弁護士に交代を打診する)には,もの凄い数の手が上がります。
(以前,交代をお願いしたときには,交代者募集のメールをMLに送ってから10秒以内に10人近くの先生からご連絡をいただきました。)
付け加えると,東京弁護士会の場合,国選弁護の担当は月5件までと決まっているので,大体報酬が7~8万円のことが多い国選事件では,5件フルに担当しても月50万円には届かない可能性が大です。
(もっとも,そもそも月5件国選弁護を担当することが至難の業であることは,交代状況に関する記述からお分かりいただけると思いますが…。)
このような状況ですので,弁護士会からの割り当てに頼れない以上は,自分で事件を見つけてきて稼ぐしかありません。
が,既に弁護士が飽和状態にある東京で,人脈や経験で劣る若手が自力で事件を見つけてくるのもまた至難の業。
そんなわけで,窮乏する若手弁護士が急増しているというのが実態なのではないかと思います。
収支のバランスを取るための工夫
じゃあどうするのかというと,収入が増えない以上は,支出を削るしかありません。
とはいえ,会費や社会保険料は削れませんから,あとは事務所経費と生活費を削るしかありません。
最近は,レンタルオフィスのようなところを使って事務所経費を5~10万円に落とすか,あるいは自宅を事務所にするという若手弁護士も増えていますが,それは,上記のような状況があってのことなのです。