東京高裁判決vs名古屋高裁判決
前回までの記事でご紹介したとおり,東京高裁と名古屋高裁の判断は分かれていますが,どちらの判断が正当といえるでしょうか。
支分権の効力発生について,裁定が果たす機能
両裁判例が引用する最判平成7年11月7日の判示するところによれば,受給権者は,社会保険庁長官の裁定を受けるまでは年金の支給を受けることはできないのですから,社会保険庁長官の裁定は,支分権の効力発生(名古屋高裁判決に則して表現すれば,支分権の具体化)について停止条件と同様の機能を果たしているということができます。
もっとも,支分権の効力発生条件として社会保険庁長官の裁定を要求しているのは国民年金法16条(及び同条の解釈)ですから,支分権の効力発生の条件は,停止条件そのものではありません。しかし,このような法定の条件の成就の場合についても,停止条件付法律行為の効力発生について定める民法127条1項に類して考えることが可能であると考えられます 。
私見
したがって,私見としては,(裁定前の)支分権についての「権利を行使することができる時」は,停止条件付債権の場合と同様に,条件成就の時(=社会保険庁長官による裁定時)と解すべきであり,名古屋高裁判決の判示が正当であると考えています。
おそらく,この問題については,いずれ最高裁の判断が下されるのではないかと思いますので,今後も注目していきたいと思います。
(この記事をご覧になられてのお問い合わせ・ご相談はこちら。)