弁護士は高収入?
「若手弁護士の窮状」という記事で,東京の若手弁護士の現状についてご紹介しましたが,巷では,「弁護士は依然として高収入の仕事だ」という声も依然として聞かれるところです。
「伊藤塾」のホームページに掲載されているコラム
弁護士の平均「収入」は2,167万円
こちらは,「伊藤塾」のホームページに掲載されているコラムですが,この中では,平成22年の弁護士の平均収入(※経験5年目の弁護士)は2,167万円であると紹介されています。
この数字は,コラムの中に記載されているとおり,平成23年7月13日付法務省発表の「法曹の養成に関するフォーラム」が行ったアンケートの結果です。
確かに,アンケート結果のうち10頁目では,平成22年の経験5年目の弁護士の平均収入は2,167万円であるとされています。
しかし,この数字は,登録5年目の弁護士の実態を正しく反映しているのでしょうか。
アンケートの結果のうち4頁目を見ると,平成22年時点で登録5年目となる弁護士(修習期58期)のアンケート回収率は,わずか11.3%に過ぎません。
このアンケートによる平均年間収入2,167万円というのは,アンケートに回答した登録5年目の弁護士11.3%の平均値であって,残りの88.7%を含めた平均値がこのとおりであるわけではないのです。
なお,ここでいう「収入」とは,経費(事務所の家賃や,事務局の給与や,弁護士会費等)を差し引く前の売上額ですから,これらを差し引いた後の「所得」は当然これより低くなります。
弁護士の平均「所得」は1,107万円
このアンケートには「所得」の平均値も掲載されていますが,平成22年の経験5年目の弁護士(のうち11.3%)の平均所得は1,107万円です。
(コラムの中では民間企業の年間給与と弁護士の「収入」の比較が行われていますが,「所得」と比較すべきだと思います。)
国税庁の統計では…
また,国税庁の統計(登録弁護士の8割超が対象)によると,平成22年では,6割以上の弁護士が年間所得1,000万円以下(500万円以下が全体の4割近く,200万円以下が全体の2割以上)とのことですが,こちらの統計の方がよっぽど実態をよく現していると思います。