令和元年の弁護士の所得金額(国税庁統計)について,
・合計人数が1187人減少
・所得600万円を超える層は128人増加
・所得600万円以下の層が1315人減少
という例年にない大きな変動があったことから,ブログ記事の中で,
単純に数字だけを見ると,この層*1で,業界からの退場者が増えているように見えますが,実態はどうでしょうか。
と書きました。
平成30年から令和元年にかけて,なぜ(国税庁の統計上)弁護士の人数が1000人以上も減少したのか,その要因を考察してみます。
弁護士登録の人数自体は増えている
国税庁統計では弁護士の人数が減少しましたが,日弁連への弁護士登録者数は,
平成30年3月31日:40,066人
令和元年3月31日:41,118人
と増えています(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2019/1-1-1_2019.pdf)。
なので,単純に業界からの退場者が増えている,というわけではなさそうです。
給与所得のみの弁護士が増えた?
上記のとおり,国税庁統計上は弁護士の人数が減ったのに対し,日弁連への弁護士登録者数は増えています。
国税庁統計の対象者は,
平成31年1月1日から令和元年12月31日までの間の所得について、令和2年4月30日までに申告又は処理(更正、決定等)した者の令和2年6月30日現在の課税の事績を、全数調査の方法で調査・集計したものである。したがって、給与所得者等で源泉徴収による納税額があっても確定申告等を要しない者は、調査の対象から除かれている。
なので,給与所得のみで,年末調整を受ければ足りる(確定申告をしない)という働き方の弁護士が増えた,ということが考えられます。
これに該当するのは,
・インハウス
・自治体の任期付職員
・個人事件なしの勤務弁護士
・弁護士法人からの給与所得のみ(全件法人受任)の弁護士
あたりでしょうか。
ただ,これらの形態が平成30年から令和元年にかけて劇的に増えた,というのもちょっと考えづらいところです。
コロナ禍による確定申告の遅れ?
令和元年分(2019年分)の確定申告については,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,令和2年4月17日以降も期限を区切らずに柔軟に受け付ける取扱いとされていました。
上記のとおり,国税庁統計の対象者は,令和2年4月30日までに申告または処理(更生,決定等)した者ですので,同年5月1日以降に申告した方については,統計の対象に含まれていません。
緊急事態宣言等の影響で,令和2年4月30日までに確定申告ができなかった方が多かった,というのが例年にない大きな変動の原因なのかも知れません。
令和2年の国税庁統計で弁護士数がどう変動するか,引き続き注視したいと思います。
*1:所得600万円以下の層