質屋が行う金銭の貸付における利息は「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」(利息制限法第1条)に該当するか
まず,①質屋の行う金銭の貸付における利息は「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」(利息制限法第1条)に当たるかどうかについて考えてみたいと思います。
質屋が行う金銭の貸付の性質
質屋が行う金銭の貸付に含まれる2つの契約
質屋の行う金銭の貸付(質屋営業法第1条)には,法律上2つの契約が含まれています。
1つは,金銭消費貸借契約であり,もう1つは,質権の設定契約(流質約款付)です。
質屋の行う金銭の貸付が金銭消費貸借契約で構成されている以上,この契約に付された利息契約が「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」(利息制限法第1条)に当たり,利息制限法の適用を受けることはもちろんです。
このことは,以下で述べる利息制限法や質屋営業法の立法者意思によって裏付けられます。
利息制限法,質屋営業法の立法者意思
質屋営業法は昭和25年に,利息制限法は昭和29年に制定された法律ですが,これらの法律が制定された際の国会における議論を見ても,質屋の行う金銭の貸付における利息が利息制限法の適用対象であることは明確に認められています。
昭和29年当時における利息制限法の効果
ただし,ここで注意しなければならないのは,昭和29年当時の利息制限法がいかなる効果を持つ法律であったのか,ということです。
昭和29年当時の利息制限法は,
「債務者は,前項の超過部分を任意に支払つたときは,同項の規定にかかわらず,その返還を請求することはできない」
と定めていました(同法第1条2項)。
利息制限法第1条2項の持つ意味
この規定は,昭和29年以前の旧利息制限法が定めていた「裁判上無効」という効果を維持するために設けられたもので,要するに,債権者(=質屋)から債務者(=借主)に対し,利息制限法の制限利率を超過する利息について,裁判を起こして取り立てることまでは認めない(制限利率を超過する利息は「裁判上無効」とする)が,債務者が裁判外で任意に債権者に支払う分には有効とする,というものでした。
つまり,当時の利息制限法の効果は,制限利率を超過する利息について,質屋が借主に対して裁判を起こして取り立てることをだけを禁止するという,ごく限られたものに過ぎなかったのです。
昭和29年当時の利息制限法による帰結
当時の利息制限法によれば,裁判の外で,借主が質屋に制限利率を超過する利息を支払った場合,その支払いは有効ですから,現在のように,制限利率を超過する部分について後から返還を求めることは(貸主が質屋であるかどうかとは関係なく)そもそも認められていませんでした。
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