質屋に対する利息制限法の適用の有無
そもそも,なぜ質屋に対してだけ,利息制限法の適用の有無が問題になるのでしょうか。
その理由の1つに,利息制限法の他に,質屋営業法という特別の法律が存在することがあります。
利息制限法の定め
利息制限法は,第1条で
「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。」
と定めています。
具体的には,
- 元本の額が10万円未満の場合 年2割(1号)
- 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分(2号)
- 元本の額が100万円以上の場合 年1割5分(3号)
を越えると,超過部分が無効となります。
質屋営業法の定め
これに対し,質屋営業法第36条は
『質屋に対する出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律…第5条第2項の規定の適用については、同項中「20パーセント」とあるのは、「109.5パーセント…」と…する。』
と定めています。
質屋営業法第36条による,出資法第5条2項の読み替え
ややこしい規定ですが,この質屋営業法第36条に従って出資法第5条2項を読み替えると,
「前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年109.5パーセント…を超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。」
となります。
利息制限法と,質屋営業法第36条による読み替え後の出資法第5条2項の関係
利息制限法第1条の定める利率
以上のとおり,利息制限法第1条の定めによると,(元金の額によって制限利率は変わりますが)制限利率の上限は年2割(=年20パーセント)ですので,質屋がこれを越える割合によって利息を定めても,それは無効となるはずです。
出資法第5条2項(質屋営業法第36条による読み替え後)の定める利率
ところが,質屋営業法第36条によって読み替えられた出資法第5条2項は,年109.5パーセントを超える割合による利息の契約についてのみ刑事罰を科しています。
つまり,利息制限法は多くても年2割までの利息しか認めていないのに,質屋営業法第36条は,(わざわざ出資法5条2項の規定を修正して)年109.5パーセントを超える利息には刑事罰を科しますよ,ということを定めているのです。
問題の所在
このことから,
①実は,質屋が行う金銭の貸付は,そもそも利息制限法第1条の定める「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」には当たらず,利息制限法の適用を受けないのではないか
あるいは,
②仮に,質屋が行う金銭の貸付は,利息制限法第1条の定める「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」には当たり得るとしても,質屋営業法第36条は,年109.5パーセントを超える利息の契約についてのみ罰則を科しているのだから,その趣旨からすれば,利息制限法第1条の適用は認められないのではないか,
ということが問題となり,争われているのです。
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