弁護士 木村康之のブログ

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再転相続における熟慮期間の起算点(最二判令和元年8月9日)

民法

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

第916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 事案の概要

①平成24年6月30日,Aが死亡する。

②Aの子が全員相続放棄をし,Aの弟であるBがAの相続人となる。

③BはAについて相続放棄をしないまま死亡し,Bの子である被上告人がBの相続人となる。

④平成27年11月11日,被上告人が,Aの債権者であった上告人のAに対する確定判決の謄本,承継執行文等の送達を受ける(本件送達)。
これにより,被上告人は,BがAの相続人であり,被上告人がBからAの相続人としての地位を承継していた事実を知る。

⑤被上告人が,平成28年2月5日にAからの相続について相続放棄の申述をし,同月12日に上記申述は受理される(本件相続放棄)。

判旨

『…民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべきである。』

『…被上告人は,平成27年11月11日の本件送達により,BからAの相続人としての地位を自己が承継した事実を知ったというのであるから,Aからの相続に係る被上告人の熟慮期間は,本件送達の時から起算される。そうすると,平成28年2月5日に申述がされた本件相続放棄は,熟慮期間内にされたものとして有効である。』

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