弁護士 木村康之のブログ

世田谷区・経堂の弁護士です。身近な法律問題についての情報を発信していきます。

「自立更生のためにあてられる」義援金(生活保護と義援金②)

「自立更生のためにあてられる」義援金とは…

1つ前の記事で,『自立更生のためにあてられる義援金は,被保護世帯の「収入」とは認定されない』ことを書きました。

そこで問題になるのは,義援金を具体的にどうすれば「自立更生のためにあてられる」ことになるのか,です。

生活保護法による保護の実施要領について」

この点について,厚生労働省からは以下の通知が出されています。
1つ目は,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日 社発第246号 厚生省社会局長通知)です。

第8 収入認定の取扱い
(中略)
2 収入として認定しないものの取扱い
(中略)
(4) 自立更生のための恵与金、災害等による補償金、保険金若しくは見舞金、指導、指示による売却収入又は死亡による保険金のうち、当該被保護世帯の自立更生のためにあてられることにより収入として認定しない額は、直ちに生業、医療、家屋補修等自立更生のための用途に供されるものに限ること。ただし、直ちに生業、医療、家屋補修、就学等にあてられない場合であっても、将来それらにあてることを目的として適当な者に預託されたときは、その預託されている間、これを収入として認定しないものとすること。
また、当該金銭を受領するために必要な交通費等及び補償金等の請求に要する最小限度の費用は、必要経費として控除して差しつかえない。
(以下省略)

この通知は,義援金の使途ではなく,使うタイミングについて定めたもので,「直ちに」使うか,将来使う場合には適当な者に預託することとしています。

東日本大震災熊本地震における通知の修正

ただし,東日本大震災の際には,この通知は,

当該被保護世帯の自立更生のために充てられる費用であれば、直ちに自立更生のための用途に供されるものでなくても、実施機関が必要と認めた場合は、預託することなく、自立更生計画に計上して差し支えないこと。
ただし、実施機関は、自立更生計画の実施状況について(自立更生に充てられたものとして手続を簡略にした分を除く)、適宜、被保護世帯に報告を求めるなどの方法により把握すること。

と修正されており(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001bd6k-img/2r9852000001be5y.pdf),今回の熊本地震についても同様の取扱いとされることなっています(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000123911.pdf)。

従って,義援金を「直ちに」使う必要はありません。

義援金の使途は…

あとは,義援金を何に使えば「自立更生のためにあてられる」ことになるのか(=義援金の使途)ですが,こちらについては,次の記事で詳しく解説したいと思います。