刑事訴訟法320条1項の文言
刑事訴訟法320条1項は,
『第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。』
と定めています。
つまり,刑訴法320条1項によれば,伝聞証拠とは「公判期日における供述に代わる書面」と「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」です。
伝聞証拠の証拠能力が否定される趣旨
ただ,通説によると,伝聞証拠の証拠能力が否定されるのは,反対尋問により原供述者の知覚・記憶・叙述の正確性を吟味することができないことによるものとされています。
そうすると,原供述の内容の真実性を証明するために用いられるのではない場合(=原供述者の知覚・記憶・叙述の正確性を吟味する必要がない場合)には,証拠能力を否定する必要はないことになります。
趣旨を踏まえた刑事訴訟法320条1項の解釈
したがって,刑訴法320条1項により証拠能力が否定される伝聞証拠とは,
「公判期日における供述に代わる書面」と「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」のうち,原供述の内容の真実性を立証するために用いられるもの
ということになります。
まとめ
伝聞証拠の定義をどう書いて良いか分からないという方は,刑訴法320条1項の文言から出発して考える癖をつけると良いのではないでしょうか。
あとは,320条1項の趣旨から,条文の文言より縮小して(=原供述の内容の真実性を立証するために用いられるものに限定して)解釈するということだと思います。