弁護士 木村康之のブログ

世田谷区・経堂の弁護士です。身近な法律問題についての情報を発信していきます。

生活保護と手持金・不動産・自動車

上記のツイートの大部分は,生活保護に関する典型的な誤解です。
以下では,厚生労働省の通知をもとに,誤解がある主な点を簡単に解説します。

現預金が0円でなくても受給は可能

生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)」

問10の2 保護開始時に保有する手持金は全て収入認定しなければならないか。

答 (略)

保護開始時の程度の決定に当たって認定すべき手持金は、当該世帯の最低生活費(医療扶助及び介護扶助を除く。)の5割を超える額とする

保護開始時の手持金のうち,最低生活費の5割までは収入認定されません。

例えば最低生活費が月13万円の世帯で,保護開始時の現預金が12万円の場合,現預金のうち6万5000円(=最低生活費月13万円の5割)までは収入認定されず,これを超える5万5000円のみが収入認定されます。

したがって,最低生活費13万円と収入認定された5万5000円の差額である7万5000円が生活保護費として支給されることになります。
(本当はもう少し細かい計算がありますが,ここでは理解しやすいように簡略化しています。)
現預金が0円である必要はありません。

なお,最低生活費は,各世帯の居住地や構成人数等によって異なりますので,Web上で公開されている計算ツール等を利用して確認してみてください。

居住用不動産は原則として保有可能

生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)」

第3 資産の活用
資産保有の限度及び資産活用の具体的取扱いは、次に掲げるところによること。
(略)
2 家屋
(1) 当該世帯の居住の用に供される家屋
保有を認めること。ただし、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものは、この限りでない。

居住用不動産については,原則は保有可能です。

処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものについては保有不可,という例外はありますが,少なくとも,居住用不動産があるからといって生活保護が受けられない,ということはありません。
(なお,住宅ローンが残っている場合はまた別の検討が必要ですが,ここでは立ち入りません。)

自動車は原則としては保有が認められていないが,通勤や通院等のために認められるケースもあり

生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)」

問9 次のいずれかに該当する場合であって、自動車による以外に通勤する方法が全くないか、又は通勤することがきわめて困難であり、かつ、その保有が社会的に適当と認められるときは、次官通知第3の5にいう「社会通念上処分させることを適当としないもの」として通勤用自動車の保有を認めてよいか。

1 障害者が自動車により通勤する場合
2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合
3 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合
4 深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合

答 お見込みのとおりである。
なお、2、3及び4については、次のいずれにも該当する場合に限るものとする。
(1) 世帯状況からみて、自動車による通勤がやむを得ないものであり、かつ、当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。
(2) 当該地域の自動車の普及率を勘案して、自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。
(3) 自動車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。
(4) 当該勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ること。

生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)」

問12 次のいずれかに該当する場合は自動車の保有を認めてよいか。
1 障害者(児)が通院、通所及び通学(以下「通院等」という。)のために自動車を必要とする場合
2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が通院等のために自動車を必要とする場合

答 次のいずれかに該当し、かつ、その保有が社会的に適当と認められるときは、次官通知第3の5にいう「社会通念上処分させることを適当としないもの」としてその保有を認めて差しつかえない。
1 障害(児)者が通院等のために自動車を必要とする場合であって、次のいずれにも該当する場合
(1) 障害(児)者の通院等のために定期的に自動車が利用されることが明らかな場合であること。
(2) 当該者の障害の状況により利用し得る公共交通機関が全くないか又は公共交通機関を利用することが著しく困難であって、他法他施策による送迎サービス、扶養義務者等による送迎、医療機関等の行う送迎サービス等の活用が困難であり、また、タクシーでの移送に比べ自動車での通院が、地域の実態に照らし、社会通念上妥当であると判断される等、自動車により通院等を行うことが真にやむを得ない状況であることが明らかに認められること。
(3) 自動車の処分価値が小さく、又は構造上身体障害者用に改造してあるものであって、通院等に必要最小限のもの(排気量がおおむね2,000cc以下)であること。
(4) 自動車の維持に要する費用(ガソリン代を除く。)が他からの援助(維持費に充てることを特定したものに限る。)、他施策の活用等により、確実にまかなわれる見通しがあること。
(5) 障害者自身が運転する場合又は専ら障害(児)者の通院等のために生計同一者若しくは常時介護者が運転する場合であること。
なお、以上のいずれかの要件に該当しない場合であっても、その保有を認めることが真に必要であるとする特段の事情があるときは、その保有の容認につき厚生労働大臣に情報提供すること。
2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が通院等のために自動車を必要とする場合であって、次のいずれにも該当する場合
(1) 当該者の通院等のために定期的に自動車が利用されることが明らかな場合であること。
(2) 他法他施策による送迎サービス、扶養義務者等による送迎、医療機関等の行う送迎サービス等の活用が困難であり、また、タクシーでの移送に比べ自動車での通院が、地域の実態に照らし、社会通念上妥当であると判断される等、自動車により通院等を行うことが真にやむを得ない状況であることが明らかに認められること。
(3) 自動車の処分価値が小さく、通院等に必要最小限のもの(排気量がおおむね2,000cc以下)であること。
(4) 自動車の維持に要する費用(ガソリン代を除く。)が他からの援助(維持費に充てることを特定したものに限る。)等により、確実にまかなわれる見通しがあること。
(5) 当該者自身が運転する場合又は専ら当該者の通院等のために生計同一者若しくは常時介護者が運転する場合であること。

自動車は原則としては保有不可とされていますが,上記のとおり,通勤や通学等に自動車が必要な場合,(上記のような細かい条件がありますが,それを満たすことで)保有が認められるケースがあります。