エベレストを舞台に繰り広げられた,「栗城劇場」のネタバラシといえる一冊。
栗城氏が「単独無酸素」でのエベレスト登頂を目指し,最終的に命を落とすまでの裏側を明らかにする中で,「誰もがSNSを通じて情報を発信できる現代特有の病理現象」といえるものがリアルに描かれています。
インターネットの急速な発展に伴い,商品・サービス・パフォーマンスの質を高めるよりも,プロモーションの技術を磨くことばかりに目が行きがちな傾向が年々強まっているように感じていますが,行き過ぎた「セルフプロモーション」により「虚構」ともいうべき自己を演出したり,十分な吟味もなしに「インフルエンサー」として他者を持て囃したりすることが,最終的に私たちに何をもたらすのか,考えさせられる一冊です。
プロモーションとは,あくまで,買われるべき商品・提供されるべきサービス・見られるべきパフォーマンスの質があってこそのもので,「虚構」を生み出すものであってはならない,と思います。