ご依頼・ご相談の際にやめていただきたいこと
昨年の12月で,弁護士になって丸10年が経過しました。
この10年間で様々なご相談やご依頼をお受けしてきましたが,その中で,弁護士の業務内容について知られていない,あるいは誤解されていること感じることが少なからずありました。
そこで,ご相談やご依頼をいただくうえで,私がご相談者様,ご依頼者様に知っておいていただきたいと考えることや,これだけはやめていただきたいと考えることをいくつか書いてみたいと思います。
今回は,ご相談やご依頼をいただくうえで,これだけはやめていただきたいと私が考えることについてです。
嘘をつく、不利な事実を隠す。
方針や解決の見通しを誤ることにつながるので,やめてください。
弁護士が最初からその事実を把握していれば対処できたのに,嘘や不利な事実が後で発覚することでそれまでの主張の整合性が取れなくなり,結果的により不利な解決となってしまうことがあります。
また,これまでの経験上,紛争において,どちらか一方にだけ不利な事実がある(片方には不利な事実が1つもない)ということはそれほど多くありません。
こちらに不利な事実があったからといってそれが致命的であるは限りませんし,相手方に不利な事実を主張・立証し,相手方の主張の弱い点を突いていくことでより良い解決が得られることもあります。
特に,初めてのご相談の場合にはどうしても話しづらい部分はあるかと思いますが,不利な事実であっても極力お話しいただければと思います。
「本当は〇〇だけど、××なことにして欲しい。」と要求する。
【弁護士職務基本規程】
(信義誠実)
第五条 弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。
(偽証のそそのかし)
第七十五条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
弁護士倫理に反するので,これはできません*1
「お金を払った依頼者のためなら,たとえ嘘をついてでも依頼者の利益を実現するのが弁護士だ。」と考えていらっしゃる方がたまにいらっしゃるのですが,それは誤解です。
弁護士職務基本規程というルールにより,弁護士は真実を尊重する義務(真実義務)を負っているので,嘘であると知りながら,虚偽の事実を主張・立証することはできません。弁護士倫理を守ったうえで,依頼者の「正当な利益」を実現するのが弁護士の仕事です。
弁護士職務基本規程に反した場合,弁護士会による懲戒処分(戒告,2年以内の業務停止,退会命令,除名)を受けることがありますが,特に,業務停止以上の処分となった場合には,ご依頼いただいているすべての方にご迷惑をおかけすることになります。
弁護士倫理に反する弁護活動というのは,(その倫理違反の活動によって利益を受ける依頼者からすれば)熱心な弁護活動に見えるかも知れませんが,実際には,すべての依頼者との関係において不誠実な行為であると私は考えています。
*1:ただし,刑事事件においては,被告人の防御権・弁護人の弁護権や誠実義務との関係でこれと異なる結論になる場合もありますが,ここでは立ち入りません。