弁護士 木村康之のブログ

世田谷区・経堂の弁護士です。身近な法律問題についての情報を発信していきます。

「依頼者見舞金制度」の設立

2017年3月3日の日弁連臨時総会で,弁護士による横領の被害に遭った依頼者に見舞金(上限500万円)を給付する「依頼者見舞金制度」の創設が可決されました。

私自身は,この制度の導入そのものに積極的に反対するつもりはありません。
弁護士による横領が相次いでいる現状からすれば,導入はやむを得ないと考えています。

ただ,この制度は,あくまで弁護士による横領が起きた後の救済手段であって,弁護士による横領を防止するものではありません。
この制度を導入する前に,横領を防止する方法について,もっと議論がされてもよかったのではないか,と思います。

2013年1月18日の「弁護士の一連の不祥事に関する理事会決議」では,

当連合会は、一連の事件に対する厳正な処置と原因究明を徹底します。また、原因究明の結果を踏まえ、今後弁護士がこのような不祥事を起こさないための再発防止に全力を尽くします。

と述べられています。

この決議から既に4年以上が経ちましたが,再発防止のために全力が尽くされたと本当にいえるのでしょうか。

弁護士会が預かり金を管理する「カルパ」制度の導入は何年も前から指摘されています。

また,横領事案の中には,資金繰りに窮した弁士が事務所運営費や生活費に充てるために横領に及んだ例も少なくありません。経営が立ち行かなくなった弁護士に対する(廃業も含めた)支援も必要でしょうし,今後はその重要性が増していくと考えられます。

理事会決議にあるとおり,原因究明を踏まえた再発防止のための取り組みが今後尽くされていくことを望みます。