AV出演拒否女性を提訴した弁護士に対する懲戒審査への反応
『AV出演拒否で女性に賠償請求 提訴の弁護士「懲戒審査相当」 日弁連異例の決定 「正当な活動」反論も』(2017年1月19日付産経ニュース)
この日弁連の決定に対して,Twitterやブログなどで,他の弁護士から,
「これでは刑事弁護で被告人が不合理な弁解をしていた場合に,それを弁護するのもアウトなのではないか」
とか,
「今後は負け筋の事件の代理人は引き受けられなくなるのではないか」
等々の反応が見られますが,さすがにそれは(少なくとも現時点では)過剰反応しすぎではないかと思います。
日弁連の綱紀委の判断
記事では,「懲戒審査相当」とした日弁連の綱紀委の判断について,以下のとおり紹介されています。
日弁連の綱紀委は28年12月、「訴訟活動は弁護士の本質的職務で、提訴が懲戒理由とされるのは極めて例外的な場合に限られるべきだ」としつつも、(1)提訴はこの女性や同様の立場にいる女性にAV出演を強制する行為とみなされる恐れがある(2)請求額の妥当性や、提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない-などとも指摘。
この記載を読む限り,日弁連の綱紀委が,単に「請求内容が不合理だから懲戒審査相当である」とか,「負け筋の訴訟を提起したから懲戒審査相当である」と判断したとは私には思えません。
あくまで『(1)提訴はこの女性や同様の立場にいる女性にAV出演を強制する行為とみなされる恐れがある』状況であるにもかかわらず,『(2)請求額の妥当性や、提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない』ことを指摘するもので,この判断の射程も,その限度にとどまるものなのではないかと考えています。
また,記事によれば,『(2)請求額の妥当性や、提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない』と指摘されていますが,それ以外にも,なぜ訴訟という手続を選択したのか(交渉や調停等,事前の話し合いによる解決はあり得なかったのか),事前にこれらの手続を踏んでいたのか等,記事からは明らかでない事情も存在します。
記事を読んでの感想
私の感覚としては,この記事を読んだときに,
- 違約金の発生根拠とその金額の妥当性
- 訴訟手続を選択した理由(特に,事前交渉の有無)
- 違約金の回収可能性の有無
といった事情を,代理人弁護士がどのくらい事前に検討していたのかはかなり気になりました。
いずれにしても,実際に懲戒されるかどうかの判断は,東京第二弁護士会の懲戒委員会の判断に委ねられることになりますので,今後の展開を見守りたいと思います。